第18章 同じ数の月を見ていた
振り返ると、そこに立っていたのは佐久間さんではなく高杉さんだった。
慌てふためく田辺先生を見て、不敵な笑みを浮かべている。
「“俺の女”に何か?」
その一言に「すっ…すみませんでした!!」と、田辺先生は急いで玄関を飛び出していった。
訳が分からず、私は呆然としてしまう。
いっその事…私もここから飛び出してしまおうか。
なぜ、高杉さんがここにいるのだろう。
佐久間さんに会いに来た…いや、私に用事があったのか。
どちらにせよ、高杉さんには会いたくなかった。
高杉さんが実の父親である事を知ったあの日から、私達は一度も会っていなかった。
連絡すらしていない。
意図的に…私が避けていたのだ。
私は今、どんな顔をして高杉さんに接して良いのか分からない。
こんな事ならば記憶が無くなる位、お酒を飲めば良かった。
残念ながらすっかり酔いは覚め、今はひたすら喉が渇いていた。