第18章 同じ数の月を見ていた
「…あの、そろそろ離して下さい。」
そう言い、田辺先生の腕を振りほどこうとした時だった。
リビングのドアが勢いよく開いた。
誰もいないと思っていたリビング。
私は驚き、思わず飛び上がりそうになる。
佐久間さんが帰って来ていたなんて…あまりにもタイミングが悪すぎる。
田辺先生もさぞ驚いただろう。
開いたリビングのドアを凝視したまま固まってしまった。
私の恋人はthe IVYのギタリストである佐久間俊二。
愛美先生にですら打ち合けられずにいた。
こんな形で田辺先生に知られてしまう事になるなんて…。
固まってしまった田辺先生の身体を引き離す。
何と言い訳をすれば良いのだろう。
男と抱き合っているところを見られてしまった。
事情はどうあれ、佐久間さんは傷付いただろう。
背中に感じる佐久間さんの気配。
振り向く事が出来ない。
私の行動はあまりにも軽率だった。
そんな中、田辺先生は慌てた様子で立ち上がり、声を裏返した。
「たっ…高杉さん!?」