第18章 同じ数の月を見ていた
むにゃむにゃと何を言っているのか分からない田辺先生とタクシーに乗り、尾崎君の店を後にした。
運転手に「どちらまでですか?」と尋ねられ、とっさにマンションの住所を言ってしまった。
「田辺先生?ここ…私の家なんですけど。
少し休んでいって下さい。
あの…吐き気はしますか?
まだエレベーターの中なので、トイレまで我慢して下さいね。」
起きているのかいないのか分からない田辺先生とエレベーターに乗り、上層階へのカウントを眺めながらどうするべきかと考える。
とりあえず、リビングのソファーで横になってもらおうか。
少し眠れば酔いも覚めるかもしれない。
佐久間さんは今日も帰りが遅いはずだ。
田辺先生とはただの同僚であり友人関係だが、さすがにこの状況は理解してもらえないかもしれない。
佐久間さんが帰宅する前に田辺先生には帰ってもらおう。
そう思い、玄関のドアを開けた。