第18章 同じ数の月を見ていた
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「あっ、すみません。
ここで降ろして下さい。」
マンションの前。
タクシーを降りた“私達”は、フラフラとおぼつかない足取りでエントランスを通り、エレベーターに乗る。
こうして酔っ払いを部屋へ運ぶのは二度目だ。
佐久間さんと出会ったあの日。
アパートの中庭で倒れているところを助けた。
あの日もこうして私は自分よりも大きな男性を支え、部屋へと連れて帰ったのだ。
“僕、お酒強いんですよ。”
そんな田辺先生の言葉はやはり嘘だった。
あの後、尾崎君が「珍しいワインが手に入ったんです。」と言ってグラスに注いでくれた白ワインを飲んだところで、田辺先生はテーブルに突っ伏してしまった。
その姿を見て慌てたのは私よりも尾崎君の方だった。
あまりにも気持ち良さそうに眠る田辺先生の顔を見て、尾崎君は「今日はとても楽しそうだったので…そのせいですかね。」と苦笑いをしていた。
本当はお酒が弱いにも関わらず、弟分のような尾崎君の前でもお酒が強いと豪語していたのだと思う。