第18章 同じ数の月を見ていた
「僕、大学時代はずっと家庭教師をしていたんですけど…。
卒業後は教師にならずに塾講師になったんです。」
「…塾講師ですか?」
「僕らの時代はまだ就職難だったから、定職に就けただけラッキーだとは思いましたけどね。
でも今は念願叶って高校の英語教師。
生徒達との関わる時間も塾講師の頃とは比べ物にならないくらい増えて、毎日本当に充実してます。」
田辺先生が塾講師をしていた事は初耳だが…何てキラキラと眩しい言葉をこれほどまでに重ねられるのだろう。
きっと…“教師になる事が夢だった”。
そんな“夢を叶えた側の人間”なのだと思う。
「田辺先生は…どうして教師になりたかったんですか?」
「僕、結構単純な理由ですよ。」
「聞きたいです。」
「高校生の頃に観た学園ドラマが面白くて。
“倉田理子”が教師役のあの人気ドラマです。」
「すみません、私…ドラマを観た事があまりなくて。」
当時の人気ドラマが分からず申し訳なくなり、頭を下げる。
そんな私に、田辺先生は「DVDBOX貸しますよ。」と微笑んでくれた。