第18章 同じ数の月を見ていた
「こちらは、今の職場の同僚で橘美波先生。数学教師。
それで、こいつは俺の“元教え子”で尾崎君。」
田辺先生の紹介を受け、互いに「はじめまして。」と挨拶を交わす。
どうやら田辺先生は元教え子である尾崎君のお店に来たかったようだ。
お酒は苦手ではあるが、可愛いがっている元教え子のために通っているとは…いかにも田辺先生らしい。
「俺、ビールで。美波先生は?」
「あ、じゃあジントニックで…。」
「はい。かしこまりました。」
先ほどから尾崎君の垂れ下がった目が私をチラチラと見ているのは“田辺先生と私の本当の関係”が気になるからだろうか。
しかし、先ほど田辺先生も言った通り、私達は職場の同僚であり友人だ。
きっと尾崎君が期待している関係ではない。
田辺先生はこういう場所に女性をあまり誘わないのだろうか。
尾崎君の反応からして、田辺先生が女性を連れて来たのは今日が初めてなのかもしれない。