第18章 同じ数の月を見ていた
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「2軒目行きますか?」
「あ、はい。」
火照った頬に夜風が気持ち良い。
居酒屋を出た私達は、タクシーに乗り込んだ。
田辺先生は運転手に行き先を告げると、座席にもたれながらネクタイを緩める。
狭い車内で腕と腕がぶつかった。
それでも私の心が動揺する事はない。
相手がもし佐久間さんならば…小指の先が触れ合っただけでも心がキュッと締め付けられる。
もし佐久間さんならば…手を伸ばし、そっと指を絡めてしまうだろう。
しかし、田辺先生と私はただの同僚であり、ただの友人。
タクシーの車窓から流れる、きらびやかな街の風景にも胸はときめかない。
「お酒強いんですよ。」と言っていた田辺先生の頬はすでに赤かった。
2軒目でお酒を一杯飲んだら、今日はそこで解散しよう。
本当はお酒が苦手なはずの田辺先生。
これ以上付き合わせるのはかわいそうだ。