第18章 同じ数の月を見ていた
「僕、函館と言えばアレが好きなんですよ。」
「アレ…ですか?」
「ピエロの看板のハンバーガー屋さんと、コンビニで買える“やきとり弁当”。」
「美味しいですよね。
実は私…そのコンビニでバイトしてました。」
「え!?本当!?」
「高校生の頃ですけど。」
田辺さんとこうしてアイヴィー以外の話題をする事は初めてだったが、とても楽しい時間を過ごさせてもらっている。
もっと言えば、同じ北海道出身の私達は食べ物の好みが似ている。
愛美先生と3人で食事をする時にはあまり気にした事はなかったが、“北海道産”の文字を見てしまうと食べたくなってしまう。
故郷の話に、故郷の食材。
普段からあまり笑う事の少ない私も、思わず笑顔が出てしまう。
同僚であり、初めての男友達である田辺先生。
こんなにも楽しいのは久しぶりだ。
何も考えず、今日はお酒を飲もうと思う。
どうせ…佐久間さんは今日も遅くなる。
私がどこで何をして、何時に家に帰ったなど、今の忙しい佐久間さんには興味が無いだろう。