第17章 秋桜が咲くのは湿った土の匂い
「彼とすれ違いが続いていモヤモヤしてるんでしょ?」
愛美先生の言葉に、思わずお弁当を広げる手が止まる。
何て鋭いのだろう。
恋愛経験豊富な愛美先生には分かってしまうのか。
“すれ違い”
今の私の心理状態にはぴったりな言葉だ。
ここ最近、どこか物足りなさを感じながら生活していた。
眠るベッドは同じなのに、肌を触れ合わせる事が出来ぬ日々。
それどころかまともな会話すら無い。
私達は“すれ違い”の最中。
この胸の“つかえ”は“すれ違い”という現象からなのだと妙に納得してしまった。
「もっと言うと…そんな彼との“すれ違い”状態の中、橘先生には気になる人がいる。」
「え?」
「田辺先生の事。」
「どうして田辺先生が…。」
「2人とも良い雰囲気だなって。」
「それは絶対に無いです。」
「そうかな?」と微笑む愛美先生に、私は慌てて否定をした。