第17章 秋桜が咲くのは湿った土の匂い
愛美先生は鋭い…とは思うが、私が田辺先生を“気になっている”などという事は絶対に無い。
愛美先生は私をからかっているのだろうか。
まるで恋愛ドラマの様な展開でも望んでいるのだろうか。
いや、私は恋愛ドラマなど興味が無い。
ドロドロとした後味の悪さがどうも苦手だ。
その点、医療系のドラマは面白かった。
神田美咲に倉田理子。
2人の女優がダブル主演を務めたあのドラマ。
アイヴィーが主題歌を担当していたあのドラマは本当に面白く、ひそかに続編を期待している。
いや、今はそんな話はどうでもいい。
「橘先生にはその気は無くても、田辺先生はどうかな?」
「え?」
「橘先生の事、いつも目で追ってるから。」
そう意味深に笑う愛美先生に戸惑う。
正直、私と田辺先生は良い友人関係を築けている。
それを証明するように、今夜は2人で食事へ行く。
昼休みの保健室。
私は愛美先生の“勘違い”を訂正しつつ、お弁当の栗ご飯を食べた。
【秋桜が咲くのは湿った土の匂い】おわり