第2章 高校教師
彼女は吸い終えたタバコを空き缶の中へ捨てる。
ゆっくりと立ち上がり、スカートについた埃を払った。
今日も特に立ち入った話はしていない。
ただ二人でタバコを吸っていただけだ。
それでもこうして彼女が学校に来てくれた事が単純に嬉しかった。
辞めたければ辞めればいいと思っていた時もあったが、こうして少しでも関わりを持ち始めると、やはりきちんと卒業してほしいと思うものだ。
私に出来る事は何なのか。
彼女のクラスを受け持っていない私が出来る事。
彼女が私に望んでいる事…。
空き缶を受け取ると「先生も買ってきてよね、タバコ。」と呆れた口調で彼女は言った。
「もらってばかりだしね。」
「マルボロなら何でもいいよ。」
「分かったよ。明日は?明日も来るんでしょ?」
「気分が良ければ。」
屋上を後にする彼女の背中を見送る。
ふぅとタバコの煙を吐き出しながら空を見上げた。
亮太を思い出すから嫌いだったタバコ。
そんなタバコの煙が空にのぼり、風に流され消えていく。
それはそれで不思議と気分が良かった。