第2章 高校教師
◇◆◇
「先生って暇なの?」
放課後の屋上、物陰に座りながら二人でタバコを吹かす。
小松加奈。
彼女の長い黒髪が初秋の風に優しく揺れた。
「どうして?」
「こんな所でタバコ吸って。仕事は?」
「いいじゃない。“休憩”くらいしたって。」
「普通は喫煙室に行くんじゃない?」
週明けの月曜日、彼女は学校へやって来た。
何か心境の変化があったのだろうか。
相変わらず無愛想な物言いではあるが、少なからず私を受け入れてくれているように感じた。
敬語を使わなくなったのもその証拠だろうか。
先生と生徒という関係で考えるといびつだが、彼女の“タバコ仲間”位にはなれたのかもしれない。
「先生って変わってる。」
「ありがとう。」
「褒めてないし…。
それに、タバコ嫌いなんじゃなかったの?」
「嫌いだよ。大っ嫌い。」
「じゃあ、何で吸うの?」
「あなたも吸ってるから…かな。」
「変なの。」