第17章 秋桜が咲くのは湿った土の匂い
「私には全て“事実”だから。」
彼女はそう言うと、屋上を後にした。
返す言葉が無い私は、ただ呆然と立ち尽くす。
彼女の中には未だに村瀬先生が存在していた。
簡単に忘れられるものではないが、正直…村瀬先生への好意はすでに無いものと考えていた。
それほど…彼女にとって村瀬先生の存在は大きかった。
私は一体今まで彼女の何を見てきたのだろう。
見守ると言いつつ、私の勝手な“想像”を押し付けていた。
彼女を理解しているつもりになっていた。
しかし…
彼女の想いは、私などには到底理解出来ない域へと達していた。
彼女が退学を選らばず、今もこうして登校している本当の理由。
“卒業するまで待ってる”
“卒業したら結婚しよう”
その言葉を今も強く信じているからだった。