第17章 秋桜が咲くのは湿った土の匂い
「朝…毎日同じ時刻に目が覚めるの。」
「…え?」
「目が覚めた瞬間、心に浮かぶのは村瀬先生。」
「それはただ…村瀬先生の事がトラウマになってるからじゃ…。」
「ううん。
毎朝、村瀬先生の事を想って目が覚めて、村瀬先生の事を考えながら化粧するの。
村瀬先生の事を想いながらバスに揺られて、村瀬先生を探しながら学校で1日を過ごす。
村瀬先生の事を考えながら食事をして、村瀬先生の事を想いながらベッドで眠る。
どうか夢に村瀬先生が出て来ますようにって祈りながら。
村瀬先生に恋をした日から…私はそうやって毎日を生きてきたの。」
彼女の声は震えていた。
「私…未だに信じてるんだよね。
“卒業するまで待ってる”って言ってくれた村瀬先生を。」
「“待ってる”って?」
「“卒業したら結婚しよう”って。
“婚約者とは別れる”って。」
「そんなの嘘に決まってるじゃない…。」
「嘘でも良いの。嘘でも…。」