第17章 秋桜が咲くのは湿った土の匂い
「橘先生もこっち来てよ!!」
お酒がまわり、上機嫌な愛美先生がこちらへと向かって手を振る。
正直、今は加わりたくない話題だ。
しかし、そんな私の胸の内など知らず、愛美先生は私の腕を強引に掴み、田辺先生の隣へと座らせた。
少し気まずそうな表情を浮かべながら、チラリと田辺先生の顔を覗き見る。
ほんのりと頬を赤くさせた田辺先生は、豪快に生ビールを飲み干すと、満面の笑みを浮かべながら私を見た。
「橘先生もアイヴィーのファンなの。
一緒にライブも行ったんだから。」
愛美先生は声を弾ませる。
「橘先生もですか!?
お若いのに素敵な趣味ですね。」
「そうなの。素敵だよね。」
「僕、高杉さんに憧れてアイヴィーのコピーバンドやっていた事もあるんですよ。」
「すごいじゃん!!」
「でも全然ダメで。
アイヴィーの音楽はアイヴィーが鳴らさないと活きないんですよね。」
「それは当然でしょ。」
愛美先生と田辺先生はジョッキを片手に笑い合った。