第17章 秋桜が咲くのは湿った土の匂い
「毎日チョコレートって…。」
私の手から受け取ったチョコレートの包み紙を開けながら、彼女はそうぶっきらぼうに言った。
「だって甘い物好きでしょ?」
「好きだけど、たまにはクッキーとかも食べたい。」
「分かったよ。明日はクッキーにするから。」
彼女と出会ったのは…去年の今頃だった。
放課後の屋上でタバコを吸っている所を見付け、注意をした。
まるで退学になる事を望み、わざと目立つ場所で吸い慣れないタバコを吸っていた様に思えた。
全ては村瀬先生の気を引くため。
当時、生活指導主事であった村瀬先生。
そうまでして、彼女は村瀬先生の心をつなぎ止めたかったのか。
いや、そうでもしないと村瀬先生の心は彼女に寄り添ってはくれなかったのか…。
どちらにせよ、今は彼女の恋心が痛いほどに理解出来る。
溶けかけのチョコレートを頬張る彼女の横顔は寂しげだ。
大人びた容姿をしているが、彼女はまだ17歳のいたいけな少女なのだ。