第16章 ウラオモテ●
◇◆◇
「俺が父親?」
激しい情事の後、ベッドに寝そべりながら佐久間さんに今までの経緯を話した。
実家のタンスから、生まれたばかりの私を抱く佐久間さんの写真が出てきた事。
佐久間さんを父親だと思い、マンションを飛び出した事。
それでも佐久間さんへの想いを断ち切れなかった事。
そして…高杉さんが本当の父親であると知った事。
「そっか。不安にさせてごめんね。」と言うと、佐久間さんは私の身体を強く強く抱き締めてくれた。
しかし…それ以上何も言う事は無かった。
「カレー食べようよ。」と、いつもの様に顔をクシャクシャにさせて笑う。
高杉さんの事には触れず、私達はカレーライスを食べた。
こうして佐久間さんとの生活を取り戻し、幸せの絶頂であるはずの私の心。
そんな私の心に芽生えた新たな悩み。
私は高杉さんが本当の父親だったという真実を受け入れられずにいた。