第16章 ウラオモテ●
佐久間さんの美しく濡れた瞳を見つめた後、そっと目を閉じた。
“して欲しい”と言葉にする事が難しい私にとっては、こんな方法でしか思いを伝えられない。
そんな私の心を察し、佐久間さんはいつも優しく丁寧なキスをくれる。
自然に絡まる舌先。
肌と肌を触れ合わせた先にあるのは、心地好い胸の締め付けと激しい快感。
私達のセックスは、いつも佐久間さん主導のものだった。
しかし…今日はどこか様子が違うようだ。
重ならない唇。
そっと目を開けると、佐久間さんはどこか不満気な表情を浮かべながら私の頬を優しく撫でた。
「俺、聞きたいんだけど。」
「…え?」
「“したい”って美波の声で聞きたいの。」
こんな佐久間さんを見るのは初めてだ。
いたずらに笑う表情は見慣れたものであるが、今日の佐久間さんはどこか“いじわる”だ。
こんな状況で…して欲しくないわけがない。
佐久間さんが望んでいるのならと、私は勇気を振り絞り「佐久間さん…したいです。 」と震える声で伝えた。