第16章 ウラオモテ●
それでも、今日のカレーは上手く出来たと思う。
仕事を終え、急いでタクシーを使って帰って来た甲斐があった。
じゃがいもに人参、玉ねぎにホタテ。
小さい頃から母が作ってくれた大好きなカレーだ。
結局…あれから母にも連絡をするタイミングを失い、実家を飛び出したままになっていた。
冷静に見えて、私は突発的な行動が多い。
きっと母はいつもの事だと思っているかもしれないが、近いうちにもう一度、母に会いに行かなければとは思っている。
いつか母に話さなければならない。
東京で佐久間さんと高杉さんに出会った事。
佐久間さんと恋人同士である事。
そして、高杉さんが父親であるという真実を知ってしまった事。
キッチンからはカレーの匂いが漂っていた。
炊飯器には炊きたてのご飯。
佐久間さんが大好きだと言っていたホワイトアスパラのサラダも作った。
後は佐久間さんが帰宅するのを待つだけ。
久しぶりにこの部屋で過ごすコロも、落ち着いた様子でソファーの背もたれに上り、身体を丸めながら眠っている。