第16章 ウラオモテ●
本籍のある北海道函館市の市役所で手に入れた戸籍謄本。
佐久間さんの名前が記されているとばかり思っていた。
しかし、そこに記されていたのは高杉さんの名前。
正直、手放しには喜べない。
背徳感無く佐久間さんに会えるという事はもちろん嬉しいのだが、高杉さんとのこれまでを考えると胸がつまりそうな思いだ。
高杉さんはどこで母と出会ったのか。
どうして母との離婚を選んだのか。
産まれたばかりの私を見て、高杉さんは何を感じたのだろう。
高杉さんは…私が娘であるという事を知っていたのだろうか。
ロサンゼルスから戻ったら、全てを高杉さんの口から説明してもらうべきなのだろう。
しかし、私の心は未だに真実を受け入れられずにいる。
例え母を裏切る事になろうとも、父親である佐久間さんを選んだ私の覚悟は一体何だったのか。
「先生、キスしようか?」
そう、からかう高杉さんが父親だった。
正直、良い気分ではない。