第15章 ひとつだけ
「高杉、野球上手かったよね?」
「何の話だよ。」
「中学入ってから始めたんだったよね?」
「そうだよ。
サクちゃんが野球部入るって言うから。」
「俺は小学生の時からやってたからね。」
「それなのにすぐ退部して。」
「高杉が上手くて嫉妬しちゃって辞めたんだよ。」
「何だよそれ…。」
「それなのに高杉、俺が辞めた次の日に辞めたでしょ?」
「だって俺はサクちゃんと一緒にいたくて野球部に入っただけだったから…。」
「“近藤菜々子”覚えてる?」
「…いや。」
「俺らが1年の時の3年。」
「それがどうしたの?」
「俺、ずっと好きだったんだよね。
高杉、告白されてちょっとの間付き合ってたじゃん。」
「覚えてないよ。何だよこれ。
俺に恨みでもあるのかよ?
だから、俺から美波を奪おうって事か?」
いつもは冷静な高杉が、珍しく声を荒げる姿を見た。
ただならぬ様子に気付き、マネージャーの月島が間に入ってくれたが、「二人で話させて。」と部屋を出て行ってもらう。
高杉とは今ここで決着をつけたい。
決着をつけて…美波を迎えに行きたい。