第15章 ひとつだけ
「サクちゃんだって…黙ってたじゃん?」
「そうだね。」
「嘘はついてないよ。」
「うん。」
高杉の気持ちは痛いほど理解出来る。
俺も、二人が父子関係である事を黙っていた。
話してしまえば何かが壊れてしまう。
そう感じた。
「…サクちゃん?」
「ん?」
「日本に戻ったらモデルの女の子、紹介するよ。」
「何でだよ?」
「モデルが嫌なら女優?」
「そんな必要ないよ。」
「俺、嫌なんだよ。
美波がサクちゃんと付き合うの。」
コーヒーを一口飲み込むと、高杉は黙りこくってしまった。
高杉の気持ちには何となく気付いていた。
やっと本音を聞き出せたような気がする。
美波が実の娘である事を知ってからの高杉の言動はおかしかった。
まるで俺と美波を引き離そうとしているのではないか…。
まさかとは思っていたが、どうやら本当のようだ。