第15章 ひとつだけ
「先生の名前…美波って言うんだろ?」
美波が“家出”をし、高杉のマンションへと泊まった次の日の事。
勘の良い高杉は全てを悟った。
「どうりでカレーに帆立入れるわけだ。
早織の作るカレーにそっくりなんだよ。」
高杉はそう頭を抱えていたが、どこか嬉しそうにも見えた。
「親子で過ごす時間をくれないか?」
拒む権利などない。
「美波も俺と過ごしたいって言ってるから。」
高杉は美波に全てを打ち明けたのだろう。
美波が望んでいるのなら、そうするべきだ。
今は高杉との時間を取り戻してほしい。
俺は高杉に言われた通り、美波への連絡を控えた…。