第15章 ひとつだけ
美波の部屋で目を覚ました時は驚いた。
見知らぬ部屋。
しかし、窓からの景色は懐かしく、迷っていた心が癒された。
出窓に飾られた写真を見付け、言葉を失った。
これは偶然か…それとも必然か。
美波の母親である早織さんの写真。
中庭で倒れていた所を助けてくれたのは早織さんだったのか…。
そう思ったが、早織さんは高杉と離婚後、実家のある北海道函館市へと移り住んだはずだ。
ならば、この部屋に住んでいるのは…
俺は単なる興味で、美波の帰りを待った。
帰宅し、驚いた表情を浮かべる美波に、どこか若い頃の高杉の面影を感じた。
初めて会った気がしない。
いや、正確には赤ん坊の時には何度も会っていた。
出産当日、デビューシングルのレコーディングが高杉だけ終わらず、俺が産院へと駆けつけた。
産着に包まれた小さな美波を抱き、早織さんと写真を撮った。
どうやら、看護師は俺が父親だと思っていたそうだが…。