第14章 正しい答え
「あの…」
「来週には戻るから。」
言いかけた私の言葉をさえぎり、佐久間さんの声はそう優しく笑った。
「来週…ですか?」
「そう。」
「だからさ、美波にお願いがあるんだ。」
「何ですか?」
「カレーが食べたいな。」
「カレー…ですか?」
「そう。カレー。」
どこまでもマイペースな人だ。
しかし、このやり取りがとても愛おしい。
佐久間さんのためなら私は何だって出来る。
「だから…戻っておいで。」
「はい…。」
涙で震える声。
夕焼けに染まる空の下、少年のように笑う佐久間さんの顔が見えた気がした。
帰ろう。
佐久間さんのもとへ。
私がこの世界で見つけた、たった一つの居場所。
“戻っておいで。”
それは佐久間さんの出した“正しい答え”なのだから。