第14章 正しい答え
「夕日が綺麗なんだ。」
重い沈黙を破り、佐久間さんは穏やかな口調でそう言った。
「凄く綺麗な朱色だよ。
空が凄く大きい。
こんな綺麗な空、見た事ないよ。
美波にも見せたいなって思って…
電話しちゃったんだ。」
そう申し訳なさそうに笑う佐久間さんに、私も思わず笑ってしまった。
何てマイペースな人なのだろう。
もしかすると、佐久間さんにとっては私達の関係など問題ではなかったのかもしれない。
「だって好きになっちゃったから。」と笑う佐久間さんを容易に想像出来る。
いや、問題ないわけがない。
話はそれてしまったが、これは大切な事だ。
佐久間さんは今後、私とどうするつもりなのだろうか。
関係を続けるのか。
それとも別れを選ぶのか…。
私は…もう自分の心を制御するなど不可能だった。
母を裏切れないと佐久間さんとの別れを決意したはずが、声を聞いただけでこんなにも心が乱されている。
佐久間さんとならば、もう何も怖くない。
それが…私がたどり着いた真の“答え”だ。