第14章 正しい答え
重苦しい空気に、心が握り潰されるようだった。
決して母を責めるつもりで恋人の話をしたわけではない。
むしろ、私は母の恋人を好意的に思っていた。
私にとって、母はいつも“完璧な母親”だった。
辛い事があろうとも涙など見せず、気丈に振る舞う母。
そんな母を支えてくれる人がいる。
ほんの少しの焼きもちはあったにせよ、娘の私にとってもそれは喜ばしい事だ。
しかし…母は私が傷付くとでも思っていたのだろう。
台所でうなだれる母は、「ごめんね。」と何度も頭を下げる。
その姿に胸がズキズキと痛む。
本当に謝らなければならないのは私の方だ。
実の父親である佐久間さんと恋に落ち、身体の関係を持った。
「ごめんなさい。」では収まりきらない罪を、私は今…背負っている。
「美波ちゃんが嫌なら、お母さん達もう会わないから。」
「え?」
「だって…私は美波ちゃんのお母さんだから。」