第14章 正しい答え
こんな状態の母と距離を置こうとしている事に、罪悪感が無いと言えば嘘になる。
本来ならば娘の私が側でしっかり支えるべきなのだろう。
しかし…私にも心がある。
どうしても今は…母に寄り添う事が出来ない。
自分勝手でワガママで、そして自分本位な私の心。
佐久間さんと出会い、惹かれ合い、震えるような恋をした私の心。
最低な娘だとは思うが、そんな心で母を支えるなど…私には出来なかった。
「ねぇ…“あの人”とは会ってるの?」
「…”あの人“?」
「そう。」
「誰の事か…」
「もう、隠さなくても良いよ。
知ってるから。」
「そうだったんだ。…ごめんね。」
「何で謝るの?」
「ごめん、でも…誇れる事でもないじゃない。」
母に恋人がいる事を知ったのは高校1年生の時だった。
アルバイトを終え、母の営む喫茶店へと向かった私は、母と恋人が車で走り去っていくのを見た。
あの日から10年。
母がひた隠しにしてきた恋人の存在。
私が知らないとでも思っていたのだろうか。
母はソファーから立ち上がると台所へ行き、私に背を向けてしまった。