第14章 正しい答え
今の私にとって、母と二人で過ごすこの時間が苦痛で仕方がなかった。
祖父の法要がなければ、間違いなく今年の夏は帰省しなかっただろう。
母を見る度、私は佐久間さんとの父子関係を思い出す。
現実を突き付けられる。
どんなに惹かれ合おうとも、私達は結ばれるべきではなかった。
そう感じざるを得ない。
「一日しか、休みが取れなかったから。」
母を避けるように、私はそう嘘をついた。
今朝、北海道へ着き、夜には東京へ戻る。
母にはそう伝えてあるが、本当はビジネスホテルに宿泊している。
発着時間を調べられては終わりだが、空港を利用する事の無い母は私の言葉を信じた。
そもそも、母は私の言葉を疑う事などない。
いつも母は私の味方だった。
母の深い深い愛情。
その愛情が…今はとても辛い。