第2章 高校教師
堀の水面にヒラリと落ちる桜の花びらを見ながら、母は言った。
“東京の桜もキレイよ。”
決して“頑張れ”とは言わない母の優しさ。
いつも私の心に寄り添ってくれる大切な人。
桜の木の前、私達は並んで写真を撮った。
「ねぇ、お母さんっていくつ?」
「今年…47歳ですよ。」
「俺とあまり変わらないな。」
「あなたはいくつなんですか?」
「44歳。」
そう笑いながら話す男は、年齢よりも若く見えた。
それは私の母も同じだった。
決して40代後半には見えない。
姉妹…とまではいかないが、私と並んで歩いていても親子にはあまり見えないかもしれない。
「お母さん元気?」
「元気ですよ。しばらく会っていないですけど。」
「函館にいるの?」
「はい。」
母は故郷である函館で暮らしている。
今も“一人”で。