第14章 正しい答え
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「似合ってるよ。」
ワイングラスを片手に、高杉さんはそう満足気に微笑む。
高級フレンチレストランの個室。
高杉さんからプレゼントされたハイブランドのワンピースに身を包み、食事をする。
正直、私の人生でこんな経験をする事になるとは夢にも思っていなかった。
本来ならば喜ぶべき事なのだろう。
しかし、先ほどから私の心はざわつくばかりだ。
「美波、肌も白いし手足も長いから何を着ても似合うよ。」
「そんな事…初めて言われました。」
「何か欲しい物ない?」
「え?」
「鞄でも靴でも。」
「いえ…結構ですよ。」
「じゃあ車は?美波、免許持ってる?」
「それも結構です…。」
「遠慮しないでよ。
俺…こんな事くらいしか出来ないんだから。」
ワイングラスを置き、高杉さんは少し寂しそうにそうつぶやいた。
高杉さんがなぜ私に対してこうも物を贈りたがるのかは分からないが、あまり居心地の良い関係とは言えない。
以前のように、下品な言葉で私をからかう高杉さんのほうが気楽に接する事が出来ていたかもしれない。