第14章 正しい答え
彼女の心は…未だに村瀬先生に囚われたままだった。
私がどんなに村瀬先生を否定しようとも、彼女は村瀬先生を求め続けた。
まるで“呪い”にでもかかってしまったよう。
しかし、私が知る村瀬先生と、彼女が知る村瀬先生では違う。
彼女にとって、村瀬先生は彼女の“全て”だったのかもしれない。
それは…私にとっての佐久間さんのように。
「もうすぐ6限目が終わるから、その前に下校した方が良いよ。
プリントは明日でも良いから。」
「うん…。」
「明日も必ず来てよね。」
「分かったよ。」
彼女は筆記用具をしまい、鞄の中へと入れる。
あの自宅に帰らせて良いものかと考えた事もあったが、児童相談所に通報すれば、傷付いた彼女を再び追い詰める事になってしまうだろう。
肉体的な虐待と精神的な虐待。
同じ虐待でも、精神的な虐待は表面化しにくい。
そのせいで、こうして17歳になるまで誰からも見付かる事がなかったのだと思う。
「…先生、ありがとう。担任でもないのにさ。」
「ううん。いいの。」
「じゃあ、また明日。」
私と、保健室に居た愛美先生に礼をし、彼女は足早に下校した。