第13章 夢の続きを話そう
高杉さんのこれまでの人生での選択は全て、日本を代表するロックバンドであるthe IVYのボーカリストになるためのものだったのだろうか。
華々しい世界で生きる高杉さん。
そんな高杉さんが立っているのは、夢にまで見た舞台だったのだろうか。
「うん。そうだよ。」
「じゃあ…夢が叶ったんですね。」
「もちろん。
俺の夢は20世紀で全て叶ったよ。」
20世紀という事は、アイヴィーが解散をする前の1990年代という事か。
夢を持った事など無い私にはとても眩しい話だ。
少し恥ずかしそうにはにかむ高杉さんの表情もまた、私にとってはとても新鮮に見えた。
今まで身体の関係を迫ってきていた時には想像もつかなかった表情だ。
心が無防備な状態。
今思えば、散々身体の関係を迫ってきていたのは、本心を見せたくないと虚勢を張っていただけだったのかもしれない。
思わずフフッと笑ってしまった私に、高杉さんは真剣な眼差しを向けた。
「だからさ…今はこうして美波と一緒に過ごす時間が大切。」
そう言って高杉さんは再び私の頭をクシャクシャと撫でた。