第13章 夢の続きを話そう
「…嫌いじゃなかったからです。」
「え?
嫌いじゃないって…好きだったからじゃなくて?」
「はい。
数学が嫌いじゃなかったからです。」
「へぇ。
何で数学は嫌いじゃなかったの?」
「数学は…」
そう言いかけて、以前にもこんな話をした事を思い出した。
あれはまだ、私がアパートで一人暮らしをしていた時の事。
見ず知らずの男であった佐久間さんと、お互いの仕事について話をしながら食事をした。
あの時は佐久間さんの事を美容師だと思っていた。
懐かしくも切ない思い出…。
もしあの日に帰れるのならば、私は佐久間さんと結ばれる事なく、そっと姿を消すだろう。
「ねぇ、何で?」
「あっ…
小学生の時でした。
国語のテストで思い切りバツを付けられたんです。
一生懸命考えた答えに…主人公の気持ちを考えて、私なりの解釈で出した答えに。
それがショックで…。
まるで自分の心を否定されたような…そんな気持ちになってしまったんです。」