第13章 夢の続きを話そう
「“愛していた”…ですか。」
「…え?」
「まさか橘先生が“愛”だなんて言うとは思ってもいなかったので。」
「どういう意味ですか?」
村瀬先生は笑いながら、メガネをかけ直す。
一体何がおかしいのだろう。
村瀬先生とこうしてプライベートな話をするのは初めてだが、先ほどから全く感情を読み取れない。
彼女は…こんな男のどこに惹かれたのか。
「橘先生は僕と“同じ側”の人間だと思っていたので。」
「同じ側とは?」
「もっと合理主義な方だと思っていました。
まさか“愛”だとか言う非合理的なものを信じているなんて思ってもいませんでした。」
「非合理的だなんて…」
「そもそも“愛”と言うものは何なのでしょうか?
世間ではそれが“大切だ”と教えられますが…
目にも見えず、触れる事も出来ないそんなものが何だと言うんです。
僕は、お互いに“有益”だと思える男女関係がベストであると考えています。
現に、僕は婚約者と有意義な生活を送っている。
橘先生、もう少し現実を見て下さい。
“あなた達”は愛だとか言うものに夢を見すぎではないんですか?」