第13章 夢の続きを話そう
「いえ、僕はあくまで小松さんが望む事をしてあげたまでです。」
「…え?」
「小松さんが電話をしたいと言えば電話で話しました。
“家に帰りたくない”と言えば、帰らずに済むように外へ連れ出しました。
ドライブに行きたいと言えば車に乗せ、映画が観たいと言えば映画館へ連れて行った…。
ホテルに行きたいと言い出したのも小松さんからです。」
「それは…恋愛感情からの行動ではないんですか?」
「恋愛感情ではありません。
僕には婚約者がいますし。
小松さんにもその事を話していましたが、それでも良いからと関係を迫ってきたのは小松さんの方ですよ。」
村瀬先生の言葉はあまりにも共感し難いものだった。
例え一時的なものだったとしても、少しばかりの恋愛感情くらいはあって当然だと思っていた。
そうでなければ、男女の関係にまで発展しないだろう。
しかし、村瀬先生には彼女への恋愛感情が微塵も無かった。
それならば…例え彼女に迫られたとしても、恋愛感情の無い村瀬先生がブレーキをかけてあげれば良かっただけの話ではないか。
…求められる事をしてあげたまで。
それも自分の私生活に支障が出ない程度に。
思いもよらぬ村瀬先生の言葉に開いた口がふさがらなかった。