第13章 夢の続きを話そう
「…小松さんの事です。」
「小松さんですか?」
「はい。2年A組の小松加奈さんです。」
「はぁ…。」
村瀬先生はとぼけた表情を浮かべながら、アイスコーヒーへと手を伸ばす。
彼女との関係を簡単には認めないだろうと思ってはいたが、まさか彼女の存在すら知らないとでも言うのだろうか。
「小松さん…ですか?」としらじらしく考える素振りに嫌悪感が湧く。
まるで息を吐くように嘘をつける人間なのだろう。
怒りで震える手をテーブルの下に隠し、私は村瀬先生を真っ直ぐと見つめた。
「小松さんとあなたが男女の関係であった事は知っています。」
「あぁ…あの“噂”の生徒ですか。
僕も正直困っていましてね。
根も葉もない“噂”ですよ。」
メガネを指で軽く直し、村瀬先生はそう冷ややかな言葉を吐いた。
一体、どこまでとぼけるつもりなのだろう。
正直、村瀬先生には人間としての温かみを感じられない。
感情が読み取れない。
“困っている”とは口で言ってはいるが、正直な所“どうでも良い”という雰囲気がにじみ出ている。