第13章 夢の続きを話そう
助手席側の窓ガラスを叩く。
その音に気付いた村瀬先生はすぐさま顔を上げ、こちらへと視線を移した。
「あの…」と、私が話し始めるよりも先に、村瀬先生は助手席側の窓を開けてくれた。
「橘先生?」
「あの…お話ししたい事があるんですが。」
「僕にですか?」
「はい。学校では話せない事なので。
お時間いただけますか?」
「…はい、少しだけなら。」
村瀬先生は車から降り、書店の方をチラリと見た。
突然現れた私に、特に戸惑う様子はない。
女子生徒に平気で手を出すような男だ。
もともと肝が座っているのだろう。
村瀬先生にしてみれば時間を潰すのにちょうど良かったのかもしれない。
腕時計を見ると午後3時40分。
村瀬先生の婚約者が仕事を終えるのは午後4時だろうか。
それならばあまり時間は無い。
向かったのは、道路を挟んだ向かい側にあるカフェ。
以前、彼女と二人で村瀬先生と婚約者が車で走り去っていくのを見たカフェだ。
結局、あの日彼女はチョコレートパフェを口にする事はなかった。