第13章 夢の続きを話そう
土曜の街は若いカップルや家族連れの姿で賑わっていた。
アスファルトが照り返す日差しの熱に耐えながら、人混みの中を歩く。
目的は通り沿いに面した書店。
その書店の前に横付けされた青いスポーツカーだ。
“あれ、村瀬先生の車。”
そう彼女が話してくれた事が、もうずいぶんと前の事に感じた。
車へと近付き、中をのぞき込む。
運転席にはポロシャツを着た村瀬先生が乗っていた。
村瀬先生がこうして休日の度に婚約者の勤める書店へと車で迎えに来ている事は、以前彼女から聞いていた。
しかし、私は婚約者の出勤日や終業時間などを把握してはいない。
朝から張り込んでいればいつかやって来るだろうと思い、テラス席のあるパン屋で仕事をしながら時間を潰していた。
そして、案の定村瀬先生は現れた。
車の中で婚約者を待ちながら、携帯電話で何かを調べている様子の村瀬先生。
今夜の食事場所を選んでいるのだろうか。
車窓からわずかに見える村瀬先生の横顔はどこか嬉しそうだった。