第12章 壊れてしまえば
「どこか寄ってたの?」
「ちょっと…生徒の家に。」
「生徒って男?」
「いえ、女子生徒です。」
「そう。」
まるで勘ぐるような言葉を放ち、高杉さんは再びキッチンへと戻った。
いつもとは明らかに様子が違う高杉さんに戸惑う。
高杉さんは沸騰した鍋の蓋を開け、味噌を溶かし入れているようだ。
その不慣れな手つきに、思わず「あっ。」と声を上げてしまう。
これもまた、私の知らない高杉さんの一面なのだろうか…。
今まで幾度となく見てきた高杉さんからは想像もつかなかった姿。
鍋から吹きこぼれる味噌汁。
私は急いでコンロの火を止めにキッチンへと入った。
「私がやりますから。」
「いいから、美波は座って待ってて。」
「いえ…。」
「いいの、好きでやってるんだから。」
まるで意地を張る子供の様な口ぶりだ。
ようやくコンロの火を止めた高杉さんは包丁を握り、豆腐を切り始める。
まるでノコギリでも扱っているかのような手つき。
もともと料理をした事などほとんど無いのだろう。
昨日言っていた「俺カルボナーラだけは得意なの。」という言葉は嘘ではなかったようだ。