第12章 壊れてしまえば
「短くない?」
ポツリとつぶやくように高杉さんは突然そう言った。
豆腐…の事だろうか。
「え?」と聞き返した私の顔を、高杉さんは恨めしそうに見つめる。
「そのスカート。」
「スカート…ですか?」
「パンツスーツじゃダメなの?」
「急にどうしたんですか?」
「痴漢にでもあったらどうするんだよ。」
不満気な表情を浮かべる高杉さんの視線は、私の下半身へと向いていた。
やはり、今日の高杉さんはどこかおかしい。
昨夜の出来事が原因だろうか。
今まで散々口説いてきたのが嘘のよう。
「早く着替えなよ。」
「あ…はい。」
高杉さんに言われるがまま、私は寝室へと向かった。
鏡の前に立ち、“短い”と言われた膝丈のスカートを脱ぐ。
昨夜のように、不純な動機で高杉さんと関係を持ちたいという気持ちはもう無い。
今はただ、何も考えずに時間が過ぎるのだけを待つ。
まるでシェルターのような高杉さんの部屋で、今夜も静かに夜が明けるのを待った。
【壊れてしまえば】おわり