第2章 高校教師
言われてみればそうかもしれない。
男の髪型も髭も、美容師であれば許される風貌だ。
“許される”と思ってしまうのは自分が公務員であるからだろう。
自由にお洒落を楽しむ事が出来る職業というのは以外と多い。
私が世間を知らなすぎるだけだ。
「君は何をしてるの?」
「私は…高校教師。」
「へぇ。楽しい?」
「え?」
「仕事は楽しいの?」
男の質問に、私は言葉をつまらせた。
楽しいなどと思った事はない。
そのような感情すらない。
私にとって教師は“収入を得るための手段”にしかすぎない。
しかし、楽しくないというわけでもない。
“嫌いではない”
これが一番しっくりくる言葉だ。
「あなたはどうなんですか?仕事は楽しいですか?」
「楽しいよ。時々迷うけど。」
男は照れくさそうに笑った。