第12章 壊れてしまえば
「瑠美…何か言ってた?」
「朝倉さん…ね。」
「“親友”なんて言葉使って。
あの女、飯田理沙に全部しゃべってた。
同じバレー部だからさ。」
「そうみたいだね。」
「本当、サイテーな女。」
「…うん。」
「村瀬先生からもさ…“もう会うのはやめよう”ってメールがきた。」
「村瀬先生が?」
「そう。噂になったとたん。
着信拒否にメッセージもブロックされてて、連絡すら出来ない。」
「そんな…。」
「私…これからどうすれば良いんだろう。」
彼女は膝を抱え、うつむいてしまった。
色あせた紺色のノースリーブから伸びる細長い腕が震えている。
狭いシングルベッドの上。
まるで鉄格子の中に閉じ込められたかのように、彼女はすすり泣く。
…これからどうすれば良いのだろうか。
彼女には毅然とした大人の姿で接しなくてはならないと思っていたが…
私にだって分からない。
彼女にかけてあげられる言葉も、彼女にしてあげられる事も分からない。
正しい答えが見つからない。
苦しむ彼女をただ見守る事しか出来ない。
蒸し暑い6畳の部屋。
隣の部屋から大音量のゲーム音楽が流れてこようとも、彼女が顔を上げる事はなかった。