第12章 壊れてしまえば
ドアを開け、彼女の部屋の中をのぞき見た。
脱ぎ捨てられた服。
ファストフードの紙袋。
汚れた鏡の前に散らばる化粧品。
予想はしていたが、床が見えぬほど物で埋めつくされている。
その中で、彼女はベッドの上に座りながら菓子パンを食べていた。
「…ベッドの上で食べないの。」
「別に良いじゃん。」
「行儀悪い。」
「うざいんだけど。」
「…ごめん。」
「先生、何しに来たの?」
優しい言葉をかけるはずが、思わず説教をしてしまった。
こんな事を言いたかった訳ではない。
しかし、あまりにも劣悪な環境での生活に衝撃を隠せなかった。
「学校…休んでたから心配して来たの。」
「まだ3日目じゃん。」
「3日でも、欠席は欠席だから。」
「大丈夫、来週からは行くよ。」
彼女は菓子パンを食べ終えると、袋をベッドの上から床へ投げ捨てた。
以前から彼女の行儀の悪さには気付いていた。
昼休みの保健室でも、彼女はベッドの上でクリームパンを食べていた事があったからだ。