第12章 壊れてしまえば
「どちらですか?」
「私、橘美波と申します。
加奈さんの高校の教師です。
ここ数日無断欠席が続いているようなので、様子を伺いに参りました。」
「あぁ、加奈…ね。」
頭をポリポリとかきながら、母親は面倒くさそうに返事をする。
正直、この女性から彼女が生まれたとは信じがたい。
誰もが振り返るほどの美少女である彼女。
切れ長の目元は似ていなくもないが、あまりに雰囲気が違いすぎる。
彼女の母親は…どこか疲れきった様子がにじみ出ていた。
「伝えておきます。」
「いえ。」
「他に何か?」
「出来れば加奈さんにお会いしたいんですが。」
「…別に良いですよ。」
彼女の母親はそう言いながら、玄関に散らかっている靴を足で片付け始めた。
「おかまいなく。」と玄関へ入ると、部屋のほとんどが物で埋めつくされている事に驚く。
足の踏み場もない…とは言わないが、物が多いのだろうと感じてしまうレベルだ。
「加奈の部屋は二階の奥です。勝手にどうぞ。」
彼女の母親はそう言って、リビングへと消えていく。
リビングのテレビからは大音量でワイドショーが流れていた。