第12章 壊れてしまえば
「彼女は、あなたの事を信用してたんじゃないの?」
「そうですね。親友ですから。」
「もしかして…彼女と村瀬先生が付き合ってるって黒板に書いたのはあなた?」
「そんな事しないですよ。
でも、男子達に教えてあげたのは私です。
みんな心配してたから。」
開いた口がふさがらない。
この女は一体何を言っているのか。
“心配”だの“知りたがっていたから”だの、親友と言っておきながら、彼女の秘密を吹聴してまわっているのだ。
強い憤りを感じた。
こんな女に…彼女を委ねてしまった私がバカだったのか。
目の前でヘラヘラと笑う朝倉瑠美の頬を平手打ちしてやりたい。
いや…さすがにそれは教師として許されない行為だ。
「私、もう帰りますね。
また加奈の事で気になったら私に聞いて下さい。
私達、親友なんで。」
そう言って朝倉瑠美は小走りに校門を出て行った。
やり場のない怒りに、握りしめた拳がわなわなと震えていた。