第12章 壊れてしまえば
「あの、朝倉さん?」
「あっ、橘先生。」
「ちょっと聞きたい事があるんだけど…。」
「何ですか?」
朝倉瑠美は携帯電話を片手にニコニコと微笑む。
どう切り出せば良いのか…。
思わず声をかけてしまったが、盗み聞きをしていたとは言いにくい。
彼女と…小松さんと連絡は取っているのか。
そう切り出すのが自然だろう。
いつも彼女と行動を共にしていた朝倉瑠美ならば、何か知っているかもしれない。
「小松さんの事なんだけど。」
「加奈の事ですか?」
「うん。連絡…取ってる?」
「取ってますよ。さっきもメールしました。」
「どんな様子だった?」
「橘先生も加奈の事知りたいんですか?」
「え?」
「加奈と村瀬先生の事なら知ってますよ。」
朝倉瑠美は持っていた携帯電話を制服のポケットへとしまう。
得意気な表情を浮かべ、朝倉瑠美は“彼女”と村瀬先生の話を始める。
私が聞きたかったのは彼女の様子だ。
彼女と村瀬先生の関係を、第三者の勝手な私感で聞きたかったわけではない。