第12章 壊れてしまえば
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在学生名簿で彼女の自宅住所を調べた。
まだ保健室で仕事をしている愛美先生には何も告げず、私は職員用玄関を出る。
彼女の自宅まではここからバスで50分ほど。
もし会えたなら、今度はきちんと互いの連絡先を交換しよう。
そう強く思った。
外へ出ると、数名の女子生徒がおしゃべりに夢中になっていた。
部活動を終えた生徒達だろうか。
大きな鞄を抱え、ペットボトルのスポーツドリンクを飲んでいた。
騒がしい女子生徒の甲高い笑い声は苦手だ。
本来ならば一言声をかけるべきなのだろう。
「さようなら。」「気を付けて帰るんだよ。」
この辺がふさわしいとは思う。
しかし、私はなるべくなら生徒と関わりたくはない。
女子生徒達も私の存在に気付いていない。
「マジキモいんだよ。」
「ヤバイよね。」
口汚く誰かの悪口を言っている様子の女子生徒達。
その横を、私は足早に通り過ぎようとした。