第12章 壊れてしまえば
『小松加奈と村瀬直紀は付き合っている』
彼女のクラス…2年A組の黒板にそう書かれていたのは4日前の事。
一体誰の仕業だったのだろう。
祖父の葬儀のため、北海道に戻らなくてはならず、彼女の側にいてあげる事は出来なかった。
この3日間のうちに彼女を取り巻く状況は大きく変わってしまったようだ。
恐れていた事が現実になってしまった…。
これから彼女はどうなるのだろうか。
このまま居場所を無くし、退学の道を選ぶのか。
そんな事は絶対にさせはしない。
とにかく、今は彼女と連絡を取りたい。
どこで何をしているのか…。
大人しく自宅にいてくれれば良いのだが。
「それより橘先生、大変だったね。」
「え?」
「葬儀…参列出来なくてごめんなさい。」
「いえ…。」
“それより”
愛美先生のその言葉が引っかかってしまった。
愛美先生にとって、彼女の事は“それより”という言葉に置き換えられてしまうほど軽い物なのだろうか。
冷たいとは思わない。
愛美先生は“仕事”として彼女と向き合おうとしている。
私は…どうだろうか。
強い憤りを胸に感じながら、昼食のサンドイッチを机に広げた。