第12章 壊れてしまえば
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「もっと早く言って欲しかった。」
昼休みの保健室。
愛美先生はため息をつきながらコーヒーを飲み干す。
「そういう事はきちんと“共有”しておきたかった。」と険しい表情を浮かべる愛美先生に、私はただ「すみませんでした。」と頭を下げるしか出来ない。
「彼女、一昨日から欠席してる。」
「…そうですか。」
「今の時代、SNSもあるから悪い噂はすぐ広まるんだね。
村瀬先生も教頭に色々聞かれたみたい。
まぁ、彼女と関係があったなんて認めなかっただろうけど。」
今朝、私は高杉さんのマンションから職場である高校へと出勤した。
3日振りの仕事。
職員室へと入ると、教師達の間にはどこかピリピリとした空気が漂っていた。
廊下では噂話に夢中になる女子生徒達の姿。
もともと和やかな職場ではなかったが、今日の空気は異質だった。
きっと…彼女と村瀬先生の関係が教師達の耳にも入ったのだろう。
机の上のパソコンへと向かう村瀬先生。
その背中へと注がれる視線を見て、そう確信した。